ヴァレ・ド・ラ・マルヌの粘土質が混じる丘陵地帯で、代々ムニエを主軸に据えてきたムッセ家。なかでも現当主セドリック・ムッセは、ムニエ新時代を象徴する存在として広く知られています。ムニエといえば“フルーティで軽い”という印象を抱く方も多いのですが、彼はその固定観念を、緻密でエレガントなスタイルへと鮮やかに書き換えた人物です。区画ごとの個性を精密にすくい上げる姿勢は国内外で高く評価され、ムニエのスペシャリストとして確固たる地位を築きつつあります。“ムニエが好きならまずムッセを”と薦めたくなるのは、その一貫した品質へのこだわりゆえでしょう。
この「テール・ディリット 2020」は、ムニエ100%による単一区画・単一土壌のキュヴェ。イリット質土壌がもたらすしなやかなテクスチャーに、2020年らしい充実した果実味が重なり、洋梨や黄リンゴの香りに赤系果実のニュアンス、さらに32ヶ月の瓶熟からくるほのかなブリオッシュの気配が漂うことでしょう。味わいは透明感のある果実に優しい酸が寄り添い、柔らかさと張りのバランスが見事に取れた印象です。ドサージュ2g/Lの控えめな設定が、その純度を際立たせています。
温度は9〜10℃、膨らみのあるブルゴーニュ型のグラスが最適です。豚フィレのローストや鴨肉の火入れを軽くした料理、ポルチーニのリゾットやキノコのクリームパスタなど、旨味と深みを持つ皿と相性が良いでしょう。コンテやミモレットの中熟成もおすすめです。
単一土壌・ムニエ100%という構成に加え、精密な造りの丁寧さが光る一本。ヴァレ・ド・ラ・マルヌの可能性を最大限に描くムッセの魅力を、鮮明に感じていただけるはずです。
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