コート・デ・ブラン南端のヴェルテュを拠点に、ドワイヤール家は17世紀からブドウ栽培を続けてきました。レコルタンが華々しく躍進し、シャンパーニュの表現が多様化する現在にあっても、この造り手は地域の“正統”を示す揺るがない存在です。収穫の半分以上を大手メゾンに売りながら、自らの名で仕込むシャンパーニュには最良の房を選び抜く。ヤニークの代には、化学資材の使用を減らしながら有機栽培への移行を進めました。長男シャルルがドメーヌに加わってからは、土壌の活性化や収量の抑制、区画ごとの醸造をさらに徹底。シャルルの急逝後も、その方針は父ヤニークと弟ギヨームに受け継がれています。奇抜さを求めるのではなく、シャルドネの緊張感と白亜質土壌に由来する純粋なミネラル感を精緻に表現する。その姿勢は、今なお多くの造り手にとって一つの指標となっています。
キュヴェ・モン・フェレは、その哲学をヴェルテュの豊かさとともに伝える一本です。評価の高いリュー・ディ「モン・フェレ」にある、方角の異なる4区画の古樹から収穫したシャルドネを使用。バリックで発酵し、10ヶ月の熟成を経た後、瓶内で70ヶ月以上寝かせています。洋梨やアプリコット、黄スモモ、オレンジオイルに、アーモンドペーストやブリオッシュ、火打石を思わせる香り。口当たりには古樹由来の凝縮感と豊かな厚みがありますが、鮮明な酸が全体を引き締め、余韻には塩味、柑橘のほろ苦さ、硬質なミネラル感が長く残ります。樽の広がりとヴェルテュらしい包容力を備えながら、透明感を失わないブラン・ド・ブランです。
温度は10~11℃。グラスは膨らみのあるチューリップ型、または小ぶりのブルゴーニュ型。オマール海老のローストや帆立のポワレ、長期熟成したコンテと好相性です。乾杯だけで終わらせず、料理とともに時間をかけて味わうことで、熟した果実の豊かさと長期熟成による奥行きがいっそう鮮明になります。コート・デ・ブランの個性と、多様化するシャンパーニュの基礎を知るのであれば、まず手に取るべき造り手です。
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